読書記録 女装して、一年間暮らしてみました。
著者は、テレビ番組のプロデューサー等で名を馳せた方。
社会的には大成功を収めているようだけど、どことなく閉塞感を感じていた彼は、寒さ対策に履いてみたストッキングをきっかけに、女装をしてみる実験を開始したのだった・・・・
著者は女装するまで自分でも気づいていなかったけれど、男であることを窮屈に思っていたよう。
男らしく、仕事で稼いで、なよなよしたところは断固として見せず。
他にも、
(このへんは私にはよくわからない男らしさなのだが。
多分年代的なものと、欧米文化圏の人間ではないからの両方が要因だと思う。著者は1959年生まれ。)
・冬でも素足にズボンで生活すべし
(薄いストッキングのような防寒具は男らしくない、らしい)
・カラフルな装いはNG
(グレー、黒、紺などが基本で、赤やピンク、明るい鮮やかな色などは男らしくない、らしい)
・知己に富むジョークや言い回しをするのに必死。自分をより大きく・強く見せようと振舞わなければいけない
などなど
彼は女性になって、男から解放されたかったみたいだ。
著者の女に対する感情の動きって、外国に行った人の気持ちと似てるところがあるな。
最初は何もかもが新鮮で、全てが良く見える。
ちょっと慣れてくると、逆に嫌なところが目につき始める。
最終的に落ち着くのは、自分の国(この本だと、男)にも良い部分悪い部分があり、外国(女)もそうであるというフラットな視点。
最終的には男に戻るんだけど、
実際女として生活してみて、男や女といった役割からある程度解放された自分に出会えたみたいで、実に実りある女装実験だったように思える。(私には)
でも結局人間も生き物だから、男や女といった生物的な特徴からは逃れられないところもあると思うんだよな。
そこらへんに関する考察はあまりなかったので残念。
エッセイとして頭を使わず軽く読めるし、
はじめてのおっぱいを買ったりするところは笑えるし、
著者がこれまで男らしくあれという呪縛から逃れて、自分らしい振る舞いとは何かを考えていくさまは、素敵なチャレンジだなって思えるし。
結構楽しく読めました。