元うつ病アラサーオタク女の記録

読書記録 筋トレ・健康について 大きい胸のファッションについて など 

【読書記録】寄生虫ビジュアル図鑑・美貌格差

 いつの間にか一か月以上開いてしまいました(笑)前の記事が2月末とは・・・。

3月は最後の追い込みじゃーとばかりにスケートばかりしていたので(あと引っ越し関係)しょうがないですね!

4月になって、無事社会人として研修を受けております。イェーイ!

新生活といっても私は私なので、いつもと変わらず楽しく読書やスケート、オタク活動などの趣味に励みたいと思います。

 

今回の読書記録はこの2冊!

 寄生虫ビジュアル図鑑

あんまり頭使わずに読めるので、ちょっと疲れた頭に最適!

図鑑というだけあって図が大き目、文章は少しだけ、なのでサクサクいけちゃう。

内容は・・・まぁこんなもんでしょう。ごく一般的なことだけ書いてある感じです。

気になった寄生虫感染症に関しては、ググったほうが詳しくわかるので、ググるためのキーワードをもらうための本といった感じでしょうか。

個人的には電子顕微鏡写真に着色するのは嫌いなので、やめてほしかったです。電顕では色が見れないのに勝手に色つけるってもはや改ざんじゃん・・みたいに思っちゃう。

写真はどれも綺麗なので、楽しいといえば楽しいんだけど。

 

熱帯ってやっぱ感染症多いね!!熱帯に住むって大変だなー、と

日本、欧州、北米あたりは気候的に恵まれてますねー。

 

生食・自然からとってきたもの、栽培したものも生はあぶねぇってことを肝に銘じるわ。

 

美貌格差:生まれつき不平等の経済学

美人は得する、ブサイクは損する。んなもん直感的にわかっとるわ。

じゃーお金に換算したら、どのくらいに差になるの?ってのを検証した本。

本当アメリカ的だなこの発想(笑)アメリカ的マネー至上主義とルッキズムが魔合体したようなテーマだわ。

内容がいまいち、こう、砕けすぎというか、推論が多すぎてあいまいだったり、読んでであまり面白くないなぁという本でした。

並みの容姿の人間が整形しても、整形費用や整形に伴う苦痛を考えると、全然ペイしないってのはほんとそう思うわ・・・。データでもそうらしいので、安心した。

全体的に読んでで、なーーーんにも意外性が無いので、うーん・・・。

読書記録 韓国 行き過ぎた資本主義「無限競争社会」の苦悩

 

韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩 (講談社現代新書)

韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩 (講談社現代新書)

  • 作者:金 敬哲
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/11/13
  • メディア: 新書
 

いやぁ・・・凄まじい。本当に、凄まじいの一言。

資本主義の最先端を行く韓国社会の現実を、韓国人が日本語で伝える本。

韓国はぶっちぎり出生率最下位だとか、受験戦争がすごいとか、聞きかじった知識よりもはるかに酷い。

 

「どんなに努力しても、自分の階層が上がる可能性は低い」とアンケートに答える人は年々増え、2017年には83.4%にまで行ってしまった。

なんという閉塞感だろう。8割以上の国民が、努力はほとんど無駄だと感じるほどだなんて。

そんな閉塞感の中でも、有名大に入り少ない大企業や公務員の就職を果たすため、小学生から大学受験のために深夜まで猛烈に勉強。ころころ変わる教育政策に適応するには、塾やコンサルタントといった専門職の助けが不可欠で、親には私教育の負担が年々重くなっていく。

大学に入ったら、良い就職のため、授業はもちろん(就職の際は授業の成績も大切。時には履修しなおすこともある)英語や情報処理といった資格取得に明け暮れる。中小企業と大企業との待遇差がありすぎる(中小企業の課長クラスより大企業の初任給は多い)から、少ない大企業の椅子に必死に手を延ばす。

良い就職先が無ければ卒業を延ばし、安定を求めて大卒が公務員の最低ランク(日本だと高卒枠)に合格するため必死で争う。

 

努力実って大企業に入れたとしても、そこから過酷な競争が始まる。競争に勝って役員になっても、平均2年で退職する現実。

もちろん、平凡な社員はどんどんリストラ。終身雇用なんてない。40後半からリストラが始まる。

老後の社会保障も貧弱だから、死ぬまで働かないといけないなんてザラ。

 

絶望しかねぇ~~~!!!!!!!!

こんな国で子供産もうと思わないよね、うん。ほんとに。

 

どうしてここまで普通の人間に厳しすぎる国になったのか?

その理由について、筆者は「人災」だという。

1950~53年の朝鮮戦争で全土が廃墟となった韓国は、軍事クーデター政権が成立、国家主導の強力な経済成長戦略を推進した。(開発独裁ってやつかな)

西欧の300年の近代化を、30年で達成するほどの圧縮成長。(漢江(ハンガン)の奇跡ってやつね)

その本質は、効率最優先で限られた資金を財閥に集中投入するというもの。そのため、日本のような中小企業や地方企業が育たず、富が一極集中する土壌が出来上がってしまった。これが「人災」その1。

 (しかもこの人災1、投資した財閥系企業がグローバル企業化して、韓国から生産拠点移転したりしてるから、結局韓国国内の雇用すら財閥が残してくれなかったという最悪の結末)

そして、97年のIMF危機で行われた、金大中(キム・デジュン)政権の新自由主義的政策。経済危機の原因は、これまでやってきた政経癒着と不正腐敗だから、政府が市場のルールを決めて監視する(規制強化)という名目だったはずなのに、やってることは真逆という。どういうことだよぉ!さすがIMFソウル支局長だな!!

資本市場の開放、規制緩和、公企業の民営化、労働市場の柔軟化&リストラ強行によって、中産階級は崩壊。社会の二極化と社会階層の定着が進む。はいこれ人災2。なんでも徹底してやりすぎなんだよなぁ・・。

 

個人的に思ったのが、韓国人の感情的な気質、官僚組織の弱さ、大統領の権限の強さは、負のスパイラルを作るコンボとして完璧すぎる。

教育政策も、大統領が私教育抑制のために深夜授業禁止にする→なら運動塾ならセーフじゃん、窓にシート貼ってバレなきゃセーフ、家でネット授業するならセーフ、といった感じで全部いたちごっこ

もっと深い問題だろうが・・・てことに安直な手を打つだけでなんの解決にもなってない。うーんこの。もしかしてわざとやってる?

 

韓国人、自虐語というか造語作るの好きだね。

「ヘル朝鮮(チョソン)」→ヘルは地獄、あえて韓国ではなく朝鮮なのは、朝鮮時代(14-20世紀)のような前近代的な国であるという皮肉

「スプーン階級論」→スプーンは生まれた家の経済力のこと。金のスプーン、つまり富裕層なら安泰、そうじゃなければオワオワリーってこと

「N放(ポ)世代」→2011年には、恋愛・結婚・出産という人生で大事な3つを貧しさゆえ放棄せざるを得ないという意味で三放世代という言葉ができた。それに加えて、現在は諦めるものが多すぎて不定数(N)になった、という意味。

 「サラデント」→salaryman+student 会社に勤めるかたわら、学生のように勉強する人々。いつリストラされるかわからないので、社内競争のため、辞めたあとのために必死で自己研鑽する。韓国サラリーマンの4/10が英語塾などの自己啓発を行い、週に5時間近く勉強しているという…。

「起承転チキン」→どんな学歴であっても、結局はチキン屋が人生の終着点

「雁パパ(キロギアッパ)」→子どもを早期留学のため外国に送り(母親も帯同)、一人で国内に残って生活&送金する夫を喩えた言葉。つらすぎる・・・。

 

日本も新自由主義グローバリズム大好き国家として完全に後追いしてるので、こういう失敗例を見てちゃんと学んでほしいです(切実)

読書記録 ルポシニア婚活

 

ルポ シニア婚活 (幻冬舎新書)

ルポ シニア婚活 (幻冬舎新書)

 

Amazonにレビュー一件もなくてびっくり。売れてないのかな?

本書では、大体50歳以上~がひとくくりにシニア婚活とされているようです。

(40代の人はかなり若い、という扱い。シニア婚活に入るか入らないか微妙なラインぽい。)

シニア婚活のパーティの様子編、シニア婚活ならではの問題編(財産、相続、成人した子供へ理解してもらうなど)、経済力はあるけど若さがない高齢男性の嫁探し編などが実例ケースと共に紹介されていく。

シニア婚活、というと、いわゆる普通の結婚とは違うように感じてしまうが、全編読んでみると、全くそんなことはない。根底は同じだと感じた。

もちろん、シニアということで、これまで築いてきた財産だったり、成人して手は離れたものの子供がいたり、といった「しがらみ」も多い。だから勢いで、というわけにはいかない。

それでも、「この人と一緒に生きたい。この人を幸せにしたいし、一緒に幸せになりたい」という気持ちが根底にあるのは、歳をとっても変わらない。

歳をとったからといって、人間じゃなくなるわけじゃないもんな。当たり前なんだけど。どうも自分と違うって無意識に思ってたというか。

 

「しがらみ」をどう解決するか、の処方箋が詳しく書かれているところは、当事者にとって非常に有益だと思う。シニア婚活は終活でもある。なるほど。

子供が遺産相続のことを心配するようであれば、事実婚も視野に入れてもいい。

ただし、自分が亡くなったときに奥さんが子供に家から追い出されるケースもある。そこはどうするかといったことを遺言書、生命保険の見直しなどで対応しておこう、とか。

そりゃ子供からすると、ぽっと出の女に財産とられたくないって思うしな。

新しい家族を作るなら、今の家族にも誠実に説明して、理解してもらうのがベストだよね。

 

婚前契約で、生活費はどうするかとか、必要なことは話し合って決めておく、というのは普通の結婚でも一般的になると良いよなー。

 

読書記録 ドアの向こうのカルト

 

ドアの向こうのカルト ---9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録

ドアの向こうのカルト ---9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録

 

 9歳の時、母親がエホバの証人の伝道者を受け入れたことから、筆者のカルト生活が始まった。

全10章からなり、5章までは、母親の入信、強要される教義や規則への反発、そして信者としての自覚の芽生えが描かれ、どのように人間がカルトに取り込まれていくのかがわかる。

非常に興味深かったのは、筆者は、オナニー禁止だとかの厳しすぎる規則や、なんでもサタンのせいにする信者に多少の反発や疑問を覚えているし、問題児扱いされるような態度(立場が上の者に従順でいることが絶対視される組織で長老の奥さんにたてつくとか)でいるものの、一度はバプテスマエホバの証人式の洗礼)を自らの意思で受けるし、本部での奉仕(ほぼ無償労働。組織内ではエリートとされている)にまで志願している、ということ。

多少の疑問など、これまで培ってきた教団内での人間関係や、教団内で出世したロールモデルへの憧れ、教団を抜けて新しい集団へ飛び込むことへの不安感に比べると、些細なことになってしまうのでは。

信者の子供を小さい時から集会に連れていくのは、もちろん教義を幼い時から刷り込むというのもあるが、このように人間関係を信者で固めて逃げる気が起こらないように地盤固めをするという意味もありそう。

エホバの証人に関しては、

カルト宗教信じてました。 「エホバの証人2世」の私が25年間の信仰を捨てた理由

カルト宗教信じてました。 「エホバの証人2世」の私が25年間の信仰を捨てた理由

  • 作者:たもさん
  • 出版社/メーカー: 彩図社
  • 発売日: 2018/05/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話 (KCデラックス)

よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話 (KCデラックス)

 

 この辺りを読んだことがあったので、信者の思考回路とかどんなことをしている組織というのはおおよそ頭に入ってます。

 

6章では、結婚を機に正社員となった筆者が、世の人(教団外の人間)と接するうちに、信者以外も普通の(むしろカルトにはまっている連中よりずっとまともな)人間だということに気づき、教団への疑問を深めていく様子。

こういうことがあるから、教団は外部との人間との接触をやめさせようとするし、バイトで食いつなぐように言うのだろうなぁ…。

 

筆者が感じた疑問、これっておかしいんじゃない?という考えが、世の人()の私からすると、いちいち当たり前というか、当然やろ…みたいなもので、地味に笑いを誘ってくる。

例えば、これまで禁止していた大学等高等教育の解禁に関しては、

「えー?? 今さら言うなよ」 

なんとも言えない感じだった。組織は時代のニーズに合わせてというが、真理に時代のニーズは関係ないのではなかったのか?時代によって、真理と霊性の基準は変わるのか? といぶかしんだ。いちいち、協会の教義変更に自分の人生が振り回されてはたまらないと思った。

 と納得いかないさまがありありと出ているし(笑)

うん、私もあれだけ小うるさく細々とした規則決めてるわりに、大事なところは雑な教義やなって思うよ、うん。

ハルマゲドンの予報()延期もなかなか笑える。こうやってあと何年引き延ばすんだろうなーw

 

宗教3要素ってのも面白いねー。

 1.絶対性(これが絶対正しい、幸せになれる!)

2.純粋性(自分たちの教義以外は信用できない、偽物だ)

3.選民性(異教徒は豚。教徒のみが救われる)

これって宗教学とかでは当たり前だったりするのかな?

私は初めて見るので、よく特徴をつかんでるなーと関心しました。

 カルトになるのは、4.布教性 が追加された場合、らしい。

なるほどー。

 

エスヨハネがいつも寄り添っていたからゲイ説、マジ???

リベラルってすげーな…。

 

8~10章は、物語がクライマックスに突入し、決着がつき、エピローグに入るようなドラマチックな構成になっていて、ラストスパートがはかどった。

これまで心の底でうずまいているだけだった疑念が、急に浮上してきて、ある時突然に洗脳が解ける感覚。昨日までは何も感じなかった、信者の表情の不気味さ。筆者が教団の矛盾を暴くための資料を貪欲に探していく、最後の決め手の一手を打つさま。一人の人間が産まれる過程を見ているようだなぁ…。

実際、筆者も(精神的な意味で)生まれ変わった、的なことを言っていたし。これはそういうことなんだろう。

9章では、家族や友人の洗脳を解くため、教義の矛盾を論理的に突く資料作りに没頭したり、教団内に噂が回らないように立ち回りながら信者の洗脳を解くために動いたエピソードが描かれる。

うーんまさにミッションインポッシブル。ここはめちゃめちゃ面白い。

ここだけ読んでも面白くないので、やっぱり信者してた前半の章は必要。なんというか、ギャルゲーの日常パート的な。

 

この筆者のすごいところは、教団を抜けたときは真摯に神も聖書も信じていたのだけど、最終的には、聖書という書のなりたち、歴史にまで手を伸ばし、聖典が絶対的なものではないことにまでたどり着いてしまうこと。

聖書には複数の違った写本バージョンが存在→絶対的真実とは…

冷静に聖書を読むと矛盾だらけ(例えば、ノアの洪水以前の川が普通に残っているとか、洪水後にネフィリムが普通出てくるとか)→真理(笑)

結局、ローマが強かったから広まっただけなんじゃ?とか、古い本だからなんか権威あるように思えるだけじゃね?といった身もふたもない結論に行きついてしまった。

キリスト教的価値観を相対化するまでになったのか…と、一人の人間に起こったパラダイムシフトを見守る体験ができて、私もとても面白かった。

 

10章で、筆者は自分の価値基準や常識を白紙から考え直した体験について述べている。

世間一般の人は自分の常識や価値観を疑ったことがないだろう。大抵の人は、他人によって植え付けられた価値観を自分の価値観だと思って生きている。ほとんどの重要な決断の根拠は、親、先生、上司、周りの人の習慣や伝統 によって決められている。自分で体験して結論を出して生きている人は非常に少ない。

 と言っているけど、そうなんだろうか?ちょっと世間を画一的に見すぎでは、という気もするが…。

でもある程度はそうしないと、社会って成り立たないしなー。

このへんは、一人ひとりが確固たる理性を持つのが理想的なリベラル的考えに毒されすぎな気もする。

ぼーっと生きてるのが普通に幸せだったりするし・・・。むむむ。

読書記録 女の不作法

 

女の不作法 (幻冬舎新書)

女の不作法 (幻冬舎新書)

 

一言感想:しょ、しょうもな~~~~~~~!!!Twitterでやれ。

 

有名脚本家となればこんなのでも本を出せてしまうのか…。

内容というと…、こういう女居るよね~みっともないよね~とつらつらと書くだけ。

ガールズちゃんねるのトピレベルの話が延々と続くのが…キツイ…。

というか社会常識が無いだけだったり、人として終わってる振る舞いをわざわざ「女の」不作法って言う必要ある?

(香典送ったふりして実は送ってない超ケチとか、再婚相手の機嫌悪くしたくないから全夫との子供を一緒に虐待するとか)

筆者の独自視点が特に感じられるわけでもなく、どこかで見たような話と言い回しばっかり。

久々に時間を心底無駄にしたな~と思う本でした。

有名脚本家らしいけど、作品知らないしたぶん見ないし。この人の名前は読まなくていい作家リストに入れとこうと思いました。まる。

ここで紹介した、痩せ姫なんかは大変不快かつ醜悪だったんだけど、まだ筆者独自の世界を見れたからこれよりはマシ。うんこ味のカレーぐらい。

今回はうんこ味のうんこ。

読書記録 老人喰いー高齢者を狙う詐欺の正体

脳が壊れた、が非常に面白かったので同じ著者のを読んでみました。

 

これです。

老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体 (ちくま新書)

老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体 (ちくま新書)

 

鈴木大介の本は良いなぁ。

こう、信念が感じられて好きなジャーナリストです。

中立ぶってる人は嫌いなので。これくらい筆者の思いを感じるほうが私は好き。

 

特殊詐欺グループの日常♡

最初の章から飛ばしすぎでは?と思うような光景が描写される。

特殊詐欺の定番、オレオレ詐欺の「箱」(店舗事務所=実行犯グループ)の毎朝の光景。
箱で、サラリーマンのように働く「プレイヤー」(被害者に電話をかける要員)たち。
プレイヤーたちは毎朝「出勤」(詐欺なので仕事と言えるかどうかはともかく)してから「御法度9か条」を唱和し、それに沿って、徹底して足がつかないように行動することを叩き込まれる。
御法度9か条は、酒、薬、女、博打、喧嘩、他業、服装、家族、銀行。
全て警察の摘発を逃れるための条項だ。
酒→詐欺で稼いだ金を使って、不用意にキャバクラで豪遊すると、資金源が疑われるため。
薬→そも論外
女→恋人に稼業をばらすと噂になる可能性がある
銀行→巨額の預金は怪しまれるため現金で隠しておく
等々の理由で設定されている。


もちろん、出勤時には怪しまれないように髪型や時計のブランドに至るまで事細かにドレスコードが決められているし、エレベーターのボタンに指紋を残さないように押すなど徹底している。

 

現代の詐欺集団って本当に高度に統率されてるんだなぁ。
合理性だけ見れば、組織として高いレベルで成り立ってるとすらいえる。
もちろん2流はすぐ摘発されるけど、一流()の犯罪組織がつくる詐欺集団は、もはやテンプレ化してるとすら言える。
ここまでテンプレ化しているのだから、もちろん、誰をターゲットにすれば最も効率よく、多額の金が奪えるか、も研究済みだ。高齢者。

 

名簿屋によって詐欺成功率は大幅アップ♡

名簿屋の存在。
これまで詐欺に引っかかった人間のリストが取引されている、程度の認識だったので驚いた。
それはあくまで初歩の初歩の話。
詐欺現場の要請は明白。”もっと金をもっていて、もっと騙しやすい高齢者だけ”の名簿だ。
一般的な高齢者名簿というと、名前、住所、電話番号のみ、生年月日があれば良い方、といった程度。


名簿屋は、名簿に記載された高齢者に”直接”連絡を取り、付加情報を追加してから詐欺集団に売るようになった。
その手口も巧妙で、「騙り調査」という手段を用いる。警察や国勢調査、地元の福祉事務所等による居住状況調査だとか安否調査といった名目を騙る。
交渉と同じで、詐欺をしかける段階も、準備が全てってことね…。
もうこの下見調査から詐欺は始まっているわけだ。
オレオレ詐欺の電話にだけ気を付ければいいっていう単純な話ではないんだな。


オレオレ詐欺の電話の定番は「三役系」いわゆる劇場型詐欺。
ポイントは、息子(娘でもいいが)役以外の役2人が代わる代わる電話口に出ることで、ターゲットを混乱させ、判断力を下げること。絶体絶命のピンチ(脅し役)と救いの手(冷静に状況を説明する役)を同時に投げかけることで、ターゲットはむしろ「解決のためにお金を払わせてください」と言いたくなる心理状況に追い込む。
名簿屋の下見調査によって、息子役は実際の息子の名前を名乗るし、脅し役は息子の会社名や役職まで知っているのだから益々リアリティは高まる。
さらにさらに、ターゲットは詐欺であることを確信しても、相手が自分の身内の情報を握っている、暴力で報復されるかもしれないという恐怖から、お金を支払ってしまうことが多いという(!!!)
脅し役がキレちらかして、相手に恐怖を植え付けるとより効果は高まる、みたい。
なんて恐ろしい手口なんだ・・・。


被害者心理にありがちなのが、ここで一度お金を払ってさえしまえば追い返せる・・・というもの。実際は一回でも払ったらカモ。
フィーバー(一度カネを奪ったターゲットから2度三度と奪い続けること)の可能性も見えてくる(嫌すぎる)

ちなみに、実際の特殊詐欺グループは先述したように、警察からの摘発を何より警戒しているので、わざわざ直接危害を加えに行くというのはほぼ無いと思っていい。

 

騙すほうが本気すぎる♡

騙される方が愚か?とんでもない。
”騙す側が、圧倒的に洗練されている”のである。と著者は言う。

引用P45
詐欺組織は徹底的に管理された高度な集団で、プレイヤーたちがこうした役回りの技術を徹底的に磨き上げ、それを支える名簿の精度が急速に進化したから、被害は減らない。

しかもこれは、詐欺の中では古典的とされているオレオレ詐欺の話。


もっともっと実態は酷い。「名簿の内製化」と「ストック強化」が進んでいる。
「名簿の内製化」これまでは名簿屋にやらせていた調査を内製化する。
理由としては、
・プレイヤーOBの人間の方が精度の高い情報を嗅ぎ分けられる
・名簿の作製には資金力が必要なため、資金力のある詐欺組織が直接作った方が話が早い
・詐欺の収益金の受け渡し 銀行が規制強化で難しくなり、手渡し(ウケ子)が行うように変化。摘発の可能性がいっきに上がった→高精度の名簿でないと同じ人間に短期間で凸しすぎて通報されたりするリスクの顕在化

「ストック強化」
今の50代60代の資産を持っている人間のリストを今から作っておく。
5年後10年後、判断力の落ちたところを狙っている…。

 

高度すぎる手口!もう会社以上では?

特殊詐欺の店舗開業には資金が必要。

トバシSIM(第三者名義の携帯電話回線)、事務所、人件費、・・・

それを提供するのが、株式会社でいう株主にあたる、「金主」「オーナー」と呼ばれる者たち。当然、収益に応じた配当を受け取る。

取締役社長にあたるのが、「番頭」と呼ばれる存在。

詐欺に必要な設備を準備し、現場店舗を運営する。どちらかというと支社長に近い。

番頭の下に、店長や平プレーヤーがつく。といった組織構造。

階層ごとに分断されており、平プレーヤーは番頭の顔すら知らないということがほとんど。

これは、平プレーヤーが摘発されたとしても、番頭、さらにその上の金主には行きつかないようにするため。

また、万が一番頭が摘発されても、番頭は金主を絶対に売らない。

その後の人生、闇稼業で生きていなくなるし、生涯報復におびえることとなるから。

番頭クラスになると、闇稼業で生きていく覚悟を決めている者だから。

 

この後は、

衝撃!ブラックすぎる研修でふるいにかけられる詐欺グループの新人候補たち!編

老人喰いプレーヤーってどんな人たち?編

とか色々あってとっても楽しいのでぜひ本編読んでみてね~!

 

盗人にも三分の理というけど、まさに特殊詐欺に加担する人たちはそんな感じ。

・金持ってる老人からとって何が悪い。金のないやつからとるのは最悪だけど、金を持ってるやつから奪うのは最悪じゃない。

・自分たちはこれまで苦労してきた、その分を取り返すんだ

こういう考えがある。

でもさ、結局詐欺組織に資金提供する「金主」という存在や、資産管理を専門家に任せるような超がつくお金持ちが一人勝ちって構造なんだよなぁ。

特殊詐欺の被害者になるような人間も所詮は小金持ち…。

あー地獄みたいだ。

 

もっと若い人にお金を回しておけば、ここまでひどくならなかったんだよっていう筆者の主張も、理解できる。

もう、数でどうあがいても勝てなくなっちゃったからどうしようもないんだけどね。

読書記録 脳が壊れた

 

脳が壊れた (新潮新書)

脳が壊れた (新潮新書)

  • 作者:鈴木 大介
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/06/16
  • メディア: 新書
 

 急に文章書きたい欲が消失して、しばらくスケートに励んでいたので久々のブログ更新となってしまいましたね。

スケートは楽しいですが大して上達はしてません(笑)

まぁ趣味なので頻度とか上達速度とかそんなに気にしなくても良いんですが。

 

「脳が壊れた」

取材記者である筆者は、不摂生が祟って41歳で脳梗塞に襲われ、一命はとりとめたが高次脳機能障害が残ってしまう。記者としての筆力を基に客観的姿勢も交え、当事者としての苦しみ、生きづらさ、回復について語る。

高次脳機能障害は一見してわかりづらく、「見えない障害」とも呼ばれる。

筆者はこれまでの取材対象(精神疾患や薬物依存、認知症など脳の機能が阻害された人)、と高次脳機能障害となった自分には、出てくる障害や当事者感覚に共通性や類似性があることを確信する。

当事者かつ軽度の機能障害を負った人間だからこそ言語化できることがある、という信念をもって書き出したのであった。まる

 

大体時系列順に章立てしてあるので、前から順番に読むのが〇です。

入院編→リハビリ編→自宅療養編→回復編 という感じでしょうか。

当事者しかわからない感覚の言語化の表現が毎回興味深いですね。

例えば、

1章P.30  まるで身体の左側に他人の身体をくっつけられたようで、触れば感触はあるものの、自分の身体という気がまったくしない(中略)

他人の身体をリモコンで(かなり遠くから)遠隔操作しながら動いているような、それでいてその他人の身体の感覚は自分のものとして存在する

これは脳梗塞を発症して治療に入る前の感覚。

筆者も言ってるけど、結構ホラーで異世界に来たみたいな感覚ですね、ほんと。

できれば一生味わいたくない感覚です。

 

2章P.40 「左方向を見てはならない」という強い心理的忌避感、障壁がある状態(中略)

「視界の左側に猫の礫死体が転がっている」もしくは同じく左前方に、親しい友人の女性や、僕の尊敬する大好きな義母(妻の母)が「全裸で座っている」感覚(中略)

絶対見てはならないものが左前方にある!だから僕は右を見る。左半分の世界はないことにしたいんです僕は。

半側空間無視の症状が出ているときの感覚はこんな感じらしい。

 

あとはリハビリの最初は動かない場所を念動力で念じて動かす感じとか、正しい動きの神経をくじ引きで引いていって、あたりが出るまでやるとか。

筆者はリハビリとは「発達の再体験・追体験」と言っていて、したことのない動きを何度も調整しつつ繰り返すことによって正しい動き・望み通りの動きをしてくれるようになる、という。

この辺は何となく理解できます。

大人から始めたスケートや筋トレもまさにそうで、したことのない動きの回路をちょっとずつ繋げていっている感覚。

それがもっと極端になったような感じ、だろうか・・・。

 

リハビリの作業療法士が、子どもの発達の支援者になる可能性を秘めている、といった視点は、長年様々な障害のある方を取材してきた筆者ならでは。

不登校児や虐待やネグレクト環境で発達の遅れてしまった子どもに、リハビリスタッフの、できないことを的確に見つけて訓練させるという専門性は高いポテンシャルを秘めている、と。

すごく面白い視点。誰かこれ真面目に検討してくれないだろうか。

老人に対する当たりがちょっととげとげしいのは気になるけど。きっと取材で無力感や憤りを感じ続けてきて、それをぶつける行き先が無かったのだろうな、と思うとあまり責める気になれない。

 

また、リハビリによって脳を使うと、神経的疲労によって神経が動かなくなる=意識レベルが低くなり最終的には寝てしまう、という症状も非常に厄介。

これは貧困女性の取材で、役所に提出する書類等の説明を始めると、気絶するような勢いで寝る、という現象に似ていることに筆者は気づく。

 貧困状態で多大なストレスと不安の中で神経的疲労を蓄積させ、高次脳機能障害となった者と同様なほどに認知判断力や集中力が極端に落ちた状態では?と。

あ~これはうつ経験者ならわかる感覚かも・・・。

文章とか本当に読めないんですよね。あとすぐ眠くなるのもわかりすぎる。

筆者が紹介している例(レジでお金が出せないレベル)ほどではないけども、自分ができないことがもどかしい、イライラする、辛いというのはわかります。

 

8章は脳梗塞になった原因を振り返る章なんだけども、これを見てるとなって当然のなりゆきというか、うん。

倒れる前にメンタルの限界が来て、寝込んでしまう私みたいなタイプの方が大きな病気になりにくいのかもしれない(軽いうつにはなる(笑))

筆者の完璧主義的な所とか、自分でやった方が早いとか、勝手に自分の段取りだけ考えてイライラしてるっていうのは、結構気持ちがわかってしまう。筆者は私よりもだいぶ酷いけど。

私もそういうところがあるからストレスで潰れてるわけだし。

自分がちょっと病的であるのを自覚して、意図的にゆるく生きていかないと身体がもたないんだよなー。

脳梗塞になったのは性格習慣病、と筆者も言ってるけど、まさにそれw

私も再発しないように、「何事もほどほど」を意識していきたい。

再発しないための「環境調整」、心に刻みたいね。

 

Amazonのレビューだと、筆者の自己愛が鼻につくという意見もあるみたいでした。

私はそんなに気にならなかったな。

貧困とかエッジのきいた取材をライフワークとしてやってる記者として、非常に熱心に仕事に打ち込んでこられた方のようなので、強いエネルギーを自他に向けるタイプの方なのだと思います。

個人的に、最近の人(特にネット空間で発言する人)は自意識について過剰に反応しすぎな人多いと思う。

私はこの筆者くらい自己愛あるほうが健全だと思うなー。

 

とても楽しめたので、次回作も読んでみよーっと