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読書記録 脳が壊れた

 

脳が壊れた (新潮新書)

脳が壊れた (新潮新書)

  • 作者:鈴木 大介
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/06/16
  • メディア: 新書
 

 急に文章書きたい欲が消失して、しばらくスケートに励んでいたので久々のブログ更新となってしまいましたね。

スケートは楽しいですが大して上達はしてません(笑)

まぁ趣味なので頻度とか上達速度とかそんなに気にしなくても良いんですが。

 

「脳が壊れた」

取材記者である筆者は、不摂生が祟って41歳で脳梗塞に襲われ、一命はとりとめたが高次脳機能障害が残ってしまう。記者としての筆力を基に客観的姿勢も交え、当事者としての苦しみ、生きづらさ、回復について語る。

高次脳機能障害は一見してわかりづらく、「見えない障害」とも呼ばれる。

筆者はこれまでの取材対象(精神疾患や薬物依存、認知症など脳の機能が阻害された人)、と高次脳機能障害となった自分には、出てくる障害や当事者感覚に共通性や類似性があることを確信する。

当事者かつ軽度の機能障害を負った人間だからこそ言語化できることがある、という信念をもって書き出したのであった。まる

 

大体時系列順に章立てしてあるので、前から順番に読むのが〇です。

入院編→リハビリ編→自宅療養編→回復編 という感じでしょうか。

当事者しかわからない感覚の言語化の表現が毎回興味深いですね。

例えば、

1章P.30  まるで身体の左側に他人の身体をくっつけられたようで、触れば感触はあるものの、自分の身体という気がまったくしない(中略)

他人の身体をリモコンで(かなり遠くから)遠隔操作しながら動いているような、それでいてその他人の身体の感覚は自分のものとして存在する

これは脳梗塞を発症して治療に入る前の感覚。

筆者も言ってるけど、結構ホラーで異世界に来たみたいな感覚ですね、ほんと。

できれば一生味わいたくない感覚です。

 

2章P.40 「左方向を見てはならない」という強い心理的忌避感、障壁がある状態(中略)

「視界の左側に猫の礫死体が転がっている」もしくは同じく左前方に、親しい友人の女性や、僕の尊敬する大好きな義母(妻の母)が「全裸で座っている」感覚(中略)

絶対見てはならないものが左前方にある!だから僕は右を見る。左半分の世界はないことにしたいんです僕は。

半側空間無視の症状が出ているときの感覚はこんな感じらしい。

 

あとはリハビリの最初は動かない場所を念動力で念じて動かす感じとか、正しい動きの神経をくじ引きで引いていって、あたりが出るまでやるとか。

筆者はリハビリとは「発達の再体験・追体験」と言っていて、したことのない動きを何度も調整しつつ繰り返すことによって正しい動き・望み通りの動きをしてくれるようになる、という。

この辺は何となく理解できます。

大人から始めたスケートや筋トレもまさにそうで、したことのない動きの回路をちょっとずつ繋げていっている感覚。

それがもっと極端になったような感じ、だろうか・・・。

 

リハビリの作業療法士が、子どもの発達の支援者になる可能性を秘めている、といった視点は、長年様々な障害のある方を取材してきた筆者ならでは。

不登校児や虐待やネグレクト環境で発達の遅れてしまった子どもに、リハビリスタッフの、できないことを的確に見つけて訓練させるという専門性は高いポテンシャルを秘めている、と。

すごく面白い視点。誰かこれ真面目に検討してくれないだろうか。

老人に対する当たりがちょっととげとげしいのは気になるけど。きっと取材で無力感や憤りを感じ続けてきて、それをぶつける行き先が無かったのだろうな、と思うとあまり責める気になれない。

 

また、リハビリによって脳を使うと、神経的疲労によって神経が動かなくなる=意識レベルが低くなり最終的には寝てしまう、という症状も非常に厄介。

これは貧困女性の取材で、役所に提出する書類等の説明を始めると、気絶するような勢いで寝る、という現象に似ていることに筆者は気づく。

 貧困状態で多大なストレスと不安の中で神経的疲労を蓄積させ、高次脳機能障害となった者と同様なほどに認知判断力や集中力が極端に落ちた状態では?と。

あ~これはうつ経験者ならわかる感覚かも・・・。

文章とか本当に読めないんですよね。あとすぐ眠くなるのもわかりすぎる。

筆者が紹介している例(レジでお金が出せないレベル)ほどではないけども、自分ができないことがもどかしい、イライラする、辛いというのはわかります。

 

8章は脳梗塞になった原因を振り返る章なんだけども、これを見てるとなって当然のなりゆきというか、うん。

倒れる前にメンタルの限界が来て、寝込んでしまう私みたいなタイプの方が大きな病気になりにくいのかもしれない(軽いうつにはなる(笑))

筆者の完璧主義的な所とか、自分でやった方が早いとか、勝手に自分の段取りだけ考えてイライラしてるっていうのは、結構気持ちがわかってしまう。筆者は私よりもだいぶ酷いけど。

私もそういうところがあるからストレスで潰れてるわけだし。

自分がちょっと病的であるのを自覚して、意図的にゆるく生きていかないと身体がもたないんだよなー。

脳梗塞になったのは性格習慣病、と筆者も言ってるけど、まさにそれw

私も再発しないように、「何事もほどほど」を意識していきたい。

再発しないための「環境調整」、心に刻みたいね。

 

Amazonのレビューだと、筆者の自己愛が鼻につくという意見もあるみたいでした。

私はそんなに気にならなかったな。

貧困とかエッジのきいた取材をライフワークとしてやってる記者として、非常に熱心に仕事に打ち込んでこられた方のようなので、強いエネルギーを自他に向けるタイプの方なのだと思います。

個人的に、最近の人(特にネット空間で発言する人)は自意識について過剰に反応しすぎな人多いと思う。

私はこの筆者くらい自己愛あるほうが健全だと思うなー。

 

とても楽しめたので、次回作も読んでみよーっと