【読書記録】ビューティ・ジャンキー
今週のお題「読書と調べもので好奇心を満たす秋」
朝晩特に涼しくなってきて、秋らしくなってきましたね
読書が捗る良い季節。
ビューティ・ジャンキー-美と若さを求めて暴走する整形中毒者たち
- 作者: アレックス・クチンスキー,草鹿佐恵子
- 出版社/メーカー: バジリコ
- 発売日: 2008/02/28
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 16回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
今日の読書記録はこれ。
Amazonで適当にぶらぶらして気になった本やダ・ヴィンチニュースで見かけたりした本をAmazon欲しいものリストに入れておいて、後で市内の図書館で探すというスタイルで本を読むことが多いのですが
今回は図書館をぶらぶらしてタイトルが気になった本ということで、ちょっと珍しい出会いでした。
内容としては、~2008年くらいまでのアメリカの美容整形事情について。
アメリカが美容整形大国となった文化的・政治的・社会的背景について、実際に整形しまくっている人の生態、ボトックスや胃バイパス手術等の手段にスポットを当てて事例・危険性について書かれています。
日本語の表紙はバラの花と無難なものになっていますが、原語版(↑リンク)だとバービー人形がバラバラにされて膿盆(医療ドラマのオペシーン等に良く出てくるソラマメのような形をした金属トレイ。名前初めて知りました(笑))に乗せられてるんですよね。
皮肉がききまくってて大好きです
ジャンキーたちが求める「理想のボディ」がいかに非現実的で、テンプレート化した美を求めているか。
そして、それぞれのパーツで理想的な美たるものを追求する、身体の全ての部分が付け替え可能であるかのような幻想。
面白かったポイント
- ジャンキーにはよくあること?手術という意識が低い、リスク軽視
手術費用の安い外国で、バカンスついでに手術するというもの。
安静にすべき術後に車に揺られまくったりするのにもびっくりだけど、それ以上に外国の医者は評判がわかりにくい、帰国後の不具合はどうするのか?とツッコミどころ満載
美容整形というと何となくライトなイメージがあるけれど、youtubeで"body lift"や"liposuction"で検索すると、ガッツリ手術だし医療行為なんだなーと実感できる生々しい手術シーンが見れます。
当たり前だけど身体を切り刻むんですよね、怖いなぁ
- 美容整形がブームになる、アメリカの社会的背景
アメリカって国がやってる医療保険が無くて、民間保険なんですよね、
民間保険会社はなるべく保険料の支払いを減らしたい→医師に本当にその治療で良いのか、もっと安い治療は無いのかといったプレッシャーをかける→医者、めんどくさがる→自由診療にすれば患者とのやりとりだけで済むやん!儲かるし楽だし美容整形参入しよ!
てことらしい。
2.引っ越し回数の増加、離婚率の上昇、選択を迫られる機会の増加・・・自分の世評を名刺代わりにあてにできない、つまりアイデンティティの喪失?
これまでは一つのところに留まることが多く、長年の評判や身の処し方で人を評価していたが・・・現代では頼れるものは、容貌、好意的な第一印象を与える能力。つまりそれを獲得するために整形せよ、ということ
3.科学とテクノロジーの発展による、「より良いものを求める文化」
115ページ より良いものを求める文化に生きるアメリカ人は、十分正常の範囲内にあったものを、少し悪いもの、少し不健康なものと分類し直すようになったようだ。
これは整形に限らず、日本の最近の発達障害ブームや↓リンクの話にも通じるものがあるのではないかな
正常の範囲がどんどん狭くなってる息苦しさがありますね
いじわる婆さんは、精神科で“治療”してしまって構わないのか - シロクマの屑籠
テキパキしてない人、愛想も要領も悪い人はどこへ行ったの? - シロクマの屑籠
・流れ作業で、大量に生み出された顔の悲劇
149ページ
もちろん、流れ作業で大量に生み出された顔は最終的には個々人のアイデンティティという概念をも損なうことになる。顔も身体もポップスターの理想形のイメージで作り直されてしまうなら、個人のアイデンティティとのつながりも、そして家族とのつながりさえも、全て失われてしまう。
整形番組に出演し顔を変えた女性が、もう母にも姉にも似ていないと、毎晩泣きながら眠っているという事例が紹介されています。
・10年以上前の本なので、今とは状況が違う気が。
人工的な美の追求の振り戻しとして、自分らしさや自然に対する回帰が起こり、オーガニックがスピリチュアルが流行ってるのでは?
前書きでは美容整形件数がどんどん増えていて・・・という危機感を煽る書き方になっているものの、実際調べてみたら意外と増えてない・・・?
この本によると2004年の美容整形件数は1200万件で2002年から44%の増加だそう。
このサイトによると、2018年の美容整形を受けた人は1800万人と、2004年から14年でやっと50%増。
伸びはかなり鈍化してるね
・胃バイパス手術からのダルダルに余った皮を取り除くbody liftのコンボ技
胃バイパス手術には、病的肥満の人を救うイメージがあったけど、意外とそうでもないのかも。
消化管リークによる感染症や極端に食事量が減ることによる栄養失調等、合併症は深刻なうえに、合併症になる人の割合も10%と高い。
そのうえ、急速に痩せることによる皮あまり、そしてそれを除去する高額なbody lift手術。100~150万の手術を2~3回受ける。
ゆっくりと減量するなら、だいぶ皮あまりもましになる(美容整形に関係ない医者談)はずなのに・・・。
しかも、高額なbody lift手術を受けても傷は残るし、お世辞にも綺麗とは言えないボディにしかならない。
何てあくどいコンボを仕掛けるんだ・・・と暗い気持ちになるものの、これまで太りすぎで列車に乗れず、列車に乗ってニューヨークに来れたことが幸せだ、と語る女性のことを考えると、ただあくどいと断ずることも難しい。